自動販売機のある風景

2017.07.05 Wednesday

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    30度をゆうに超える暑い中を運転していて、信号で止まった。左手を見やると、古そうな黄色い自動販売機がある。フロントガラスになんやらかんやらが反射しているのだが、その販売機だけがやけに主張でもしているように印象的である。そういえば、小学低学年の頃の思い出のいくつかは、自動販売機がらみである。記憶の節々に、黄や青や赤の自動販売機があって、僕はやたらと無駄に歩き巡る子供だったから、道行けばその脇にはそれらがぽつりぽつりとあって、喉は渇いているのに、ポケットの小銭が足らなくて、眩しく見つめながら通り過ぎた記憶だけが、思い出すまでもなく、心の縁にこびりついて落ちないでいる。あの少年の頃の憧れが、ふとした拍子に出てくる時があるのであろう。目の前に見えている古びた販売機の前を、今にも少年時分の僕がうらめしそうに通り過ぎていくようだ。硬貨が機械の奥の方に落ちていく音、ボタンを押してから少し間があって、やはり奥のほうでガシャガシャンと鳴り、ゴロゴロリンと缶ジュースが手前に出てくる。その時の気持ち。少年の頃から無数に重なっていく経験とやらにもめげずに、受け取り口から、缶を引き出す時の感触は今でも覚えている。たまに釣り銭忘れを見つけて喜んだり、機械の故障か、押せばいくらでも缶が出てくることがあったり、当たり付きの機械があったり、その頃は250mlのスチール缶ばかりだったことを思い出したりしながら、暑さの中で幻のように揺れて見える黄色い自販機を見ているのであった。やがて信号は青に変わる。僕は少年時代に手を振るかのようにして、その場を去った。夏は思い出の影もが濃く見える頃だろうか。

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