鳥取の温泉旅館
2017.05.17 Wednesday
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岡山から山を越えて鳥取へとやって来た。宿は、駅から近い温泉旅館丸茂(まるも)さんである。ご主人、若女将、ご友人らの歓待を受け、さらに日本酒瑞泉、鳥取ならではの素材を活かした料理などなど、癒される夜であった。実は日本海沿いの国々が大好きで、遠くに来たような思いと、故郷を訪ねたような思いとが交差する不思議な愉悦を味わえる場所である。なぜだかは分からないが、海が違うからかもしれない。千葉に生まれ、東京暮らし、葉山暮らし、と太平洋から吹く風を受けた年月が長かったせいもあり、日本海は少し言い過ぎるなら、別国の海である。そこに暮らす人々や、育つ穀物などは、見知らぬ土地からのものであり、そこに遠望と近景の混じった不思議な心地がするのだ。温泉旅館の楽しみの最たるものは、やはり入浴に尽きるだろう。さらりとした掛け流しの湯に夜中に一人で浸かりながら、ふううと息を長くとれば、目の前のタイル画には裸婦がある。ルソーの名画を模したものだろうか。淡く柔らかな色彩は美しく、しばし眺めてしまった。思えば、浴場の壁に裸婦が描かれているのを見た記憶はないので、生涯初の経験かもしれない。そんなことまでぼんやりと思いつつの入浴は、なかなか乙なものであった。ご主人の言葉によれば、都築響一さんも気に入っていらした風呂絵だと聞く。さもありなん。丸茂さんは100年の老舗でもあり、館内をぶらりとするのも味わい深いものであった。本日は、朝から活動である。写真を撮り、たまにぼんやりと考え、1日が過ぎていくのである。丸茂の湯を肌に残しつつ、しばしの鳥取である。
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