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2018.08.20 Monday

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    旨し水炊き

    2017.05.01 Monday

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      福岡は旨いのである。これはもう仕方がない。空港が近くて、街はコンパクトにまとまり、東西南北に足を伸ばせば美しい自然もあって、、、。といった紋切り型の福岡礼賛には必ず食の旨さが加えられるのも仕方ないほど、旨い。ここに至ったいきさつは知らないが、理由もあるのだろう。僕などの知識欲のない人間には、ここから先へは興味がないのだが、とにかく今日の福岡は旨いことは間違いない。国内外をぶらぶらしてきたが、美味しいなあと溜め息をつかせる街においては、ここ福岡が筆頭格であろう。春の夜、季節の変わり目に先を急がず、しばし立ち止まるようにして、鍋にあずかった。もつ鍋でも良かったのだが、ちょっとした祝いの席であったので、水炊きと相成った。あっさりとコクのある鶏出汁に、箸が止まらない。高校生のバイトの女の子が慣れた手つきで進めてくれるのだが、鍋に落とされた具材がほどよくなるまでの間が、またいいなと思った。冬風の夜に身も心も緩めていただく鍋もいいのだが、うたかたの春の涼やかな夜に食べる鍋には、より風流を感じた。地酒と共にほろよい満腹となる頃には、夜空を見上げなくても、この胸の中に無数の星々があるような幸せを得た。皿の上の装飾はここにはない。鍋というのは、どう品良くまとめても、本質は野趣にある。屋外、山中での食事の線上にある。切って整えた食材をただ煮立った出汁に投入するだけのこと。目を閉じなくても、口にすれば、五臓六腑に草原や海原が開く。書けばこのように印象も切りなく伸びていくのだが、なんてことはない。要は、旨かったのだ。鍋が、そして春が。
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